「たちまち」の活動を行う中で、(単純ですが)まちには人が必要であることを改めて感じました。ここに住んでいる人に、島外の多様な価値観を持っている人が混ざり合うことで、より大きな力になっていくこと、(わたしたちの生活も楽しくなっていくことも!)を知りました。この場所で生まれ育ち、今は島外にいる人も、旅の途中でここにふらっと寄った人も、信頼できる人がそこにいることが、ここで生きていくきっかけになると思います。気軽にここに住んでみて人と混ざり合うことが、この島に住む一歩になる。「気軽に住める住まいの準備」が必要であることを強く感じるようになりました。単身者4人分の住まいという小さな計画ですが、敷地は芦辺浦の入口ともいえる場所でここから風景を変えていく、という思いで計画しました。海に突き出た100年以上前から何も変わっていない石積みの上にこの敷地はあります。そこはかつてイワシの加工場として人々が働き、賑わっていた場所。その場所に人の気配を再び取り戻すこと。これからまちと社会が変わる可能性のようなものを、少しでも感じられるものになれば、という思いです。潮の満ち引きや風の音、自然のリズムや静けさを感じながら、シンプルな生活ができる住まいをつくりました。今は4人分の住宅という小さな計画ですが、人の存在がこの場所を活性化し、感情や感覚を伴った新しい風景となることを願っています。