⻑崎県の離島壱岐島のコワーキング利⽤・企業のオフサイト研修も行う施設の一棟。
‛まちと共に成長する‘建築を目指して、様々な機能をもった小さなスケールの空間をまちに分散する計画である。1つの建物として集約せず分散することで、このまちのスケールにあった地元の⼈が⾝近に感じることができる空間となる。空いた空間はまちにまだまだ残されており、1つの建物で完結しないシェアオフィスはこれから様々なかたちで拡張していくことを可能とする。また、この施設の成長が長く放置された空き家や空き地の問題の解決の一助になっていくことも意図されている。オフィス利用者は様々な通りを歩く間に地元の人々との自然なコミュニケーションが展開される。これは地域全体で人がゆるやかにつながる新しいライフスタイルの提案である。
「境界をぼかす」
効率的なエネルギー消費のために、屋内空間を最小化し、敷地奥側に設けられた屋外空間を最大化している。周囲の建物と気候条件からこの場所における自然エネルギーの最適な活用ができる形態を模索。前面の通りから奥の隣地建物まで見通せる空間は、風の通りを頼りに設計された。
外壁のない屋外空間は、開閉できる農業⽤シートにより取り込む光と⾵を調節可能としている。ふわりと揺れるシートが⾵を可視化し、また敷地の境界を曖昧にする。以前のまちには誰のものか分からない塀や椅子、植物があって、玄関先などの個人のスペースもゆるやかに共有されていた。ここでは敷地境界を曖昧にし、周囲とお互いが少しずつ依存しあう関係をつくりだすことを意図している。このまちの隙間に設けられた空間は、都市の機械⾳とは違うノイズ(まちの人の活動や鳥、虫たちの声)、⼼地よく吹き抜ける⾵と共にゆるやかにまちとつながっていく。
Photo : YASHIRO PHOTO OFFICE