小さな港の風景が広がる海際の敷地に建てられたわたしたち自身のオフィスの計画である。粗い左官仕上が施されたファサードの曲面壁は、人が寄り添うことができる「やさしい壁」をイメージして計画された。この壁沿いはバス停のように人の気配がある場となることを意図している。

内部ではどこからでも海の気配が感じられるようなプランとなっている。作業空間は天井に照明を設置せずフラットな塗装仕上とし、おおらかな空間をつくりだした。窓際に設けられたミーティングスペースは、刻々と変わる水面の光を感じながら変化に富んだ空間体験を提供する。海際の外部空間は作業、打合せ、または食事など様々に使われている。ハイサイドライトからの十分な光に満たされた４ｍの天井高さのキッチンスペース。ここでは食事をつくったりパンを焼いたりと生活としての機能も担う。

ワークデスク、ミーティングデスクと造作キッチンのデザインは友人でもあるNOD&W是永氏。１つ１つの家具が、この空間に寄り添うように考えられた。

Photo : YASHIRO PHOTO OFFICE